「くるみ割り人形」の初演

クラシカジャパンで、ベルリンシュターツバレエの「くるみ割り人形」を見る。初演の再構築を目指した上演。といっても、初演の振付はほとんど失われているので、美術、衣装の再現というところが大きい。第二幕の人形の王国のセットは、「眠りの森の美女」「白鳥の湖」と同じような世界観で作られており、まさに王国。そこには女王様がいて、側近がいる。衣装の色彩も華やか。クララとくるみ割り人形は、ねずみとの闘いが終わるまでは子供で、そこから大人に変身。くるみ割り人形は人形の王国の王子という設定。二人はドロッセルマイヤーに連れられて王国に行き、グラン・パ・ド・ドゥはクララと王子が踊る。最後に、二人は王国の王と王妃になる。これは夢ではなく、現実という終わり方。必ず、クララを現実に戻す演出がほとんどなので、この終わり方は新鮮。メンバーの中には日本人が数人いる。他のドイツのバレエ団同様、ここもインターナショナルなバレエ団のようだ。

モース警部系列作品

イギリスの刑事物は、一話完結でも100分と長いし、事件が暗くて陰鬱だし、事件の関係者の人数が多いし、カーチェイスや撃ちあいのようなアクションが少ないし、笑いがないし、アメリカのものに比べるとちょっと退屈。「主任警部モース」はそれに加えて、モースがちょっと上から目線のひねくれた性格なので、より一層難解。しかし、スピンオフの「ルイス警部」「モース刑事」を見始めると、俄然面白くなってきた。「モース刑事」はモースの若い頃の話なので、舞台は60年代。パワハラ、セクハラ、あたり前、警察内部は腐敗、戦争の爪痕もある時代、若いモースがどう生き抜いたかというドラマ。後付けとはいえ、生涯独身だったモースが、心を寄せる女性がいたり、付き合う女性もいたが、結局、生涯女性に惚れやすく、同情しやすく、だまされやすい性格だったことがわかる。後に上司になるストレンジ、検視官のマックスとは、若い頃からの付き合いだったこともわかる。特にストレンジは、さりげなくモースを守っていたことがわかる。モースの死後の「ルイス警部」はモースのパートナーだったルイスが主役。当然、モースの名前がよく出て来るし、モースの好きだったワーグナーはモースのテーマのように流れる。エンデバー(モースのファーストネーム)賞という若い音楽家のための奨学金があって、匿名だとはえ言え、明らかにモースの寄付による奨学金。モースは一人寂しく亡くなるが、ルイスは奥さんに先立たれたとはいえ、子供も孫もいて、新しいパートナー(検視官)も出来て、モースよりは明るい老後をおくれるようだ。最後の方は、ルイスがかつてのサーズデー、パートナーのハザウェイがかつてのモースのような関係性になってくる。今後、スピンオフのスピンオフで、ハザウェイ主役のドラマが作られるだろうか。「モース刑事」はまだ製作されそうなので、どこまでやってくれるか楽しみ。

リブート

アメリカのドラマはリブート流行りだ。そもそも、リブートって何?って感じだったし、「ハワイ5-O」を現代版で製作するという話も、え?って感じだったが、いざ見てみると、面白い。結局9シーズンまでやる成功作に。その後、「マクガイバー」「SWAT」「マグナム」と成功続き。オリジナルがあるとは言え、全く新しい発想なので、面白い。「ハワイ5-O」は、オリジナルのメインテーマをそのまま使っていたり(時代を超えた名曲)、オリジナルに出演していた人物が同じ役で出てきたり(エドワード・アズナール)、オリジナルの出演者の息子が出ていたり(デユーク)、懐かしさも堪能できる。オープニングのマクギャレットを紹介する演出がオリジナルと全く同じなのも感激だ。因みに、新生マグナムは、チャラチャラした陽気な探偵だが、元祖マグナムは、今「ブルーブラッド」で深刻な役をやっていて同じ役をやっていた人とはとても思えない。それもまた面白い。

海賊

BSプレミアムで、ミラノ・スカラ座バレエの「海賊」を見る。アンナ・マリー・ホームズの構成・演出。「海賊」を全幕で上演するのは、以前はキーロフ・バレエくらいで珍しかったが、最近は上演するところが増えてきた。イタリアのバレエ団なので、衣装が華やかで、見応えがある。しかし、このバレエで不可解なのは、アリの存在だ。パ・ド・ドゥ(全幕上演ではパ・ド・トロワ)を踊るので必要な役なのだが、ストーリーにはほとんど絡まない。しかし、そこそこのダンサーが踊るので、何とかしようと思っても、他の見せ場は作れない。グリゴロヴィッチは、ついにアリの役をなくしたそうだが、まだ見る機会がない。

チェリスト

BSプレミアムで、英国ロイヤルバレエの「チェリスト」を見る。キャシー・マーストン振付。天才チェリストで、ダニエル・バレンボイムの最初の妻で、二十代で多発性硬化症になり若くして亡くなった伝説のチェリスト、ジャクリーヌ・デュプレの生涯を描いたバレエ。少女時代から死までを描いていて、チェロを擬人化したり、コンサートやメディカル検査をバレエで表現するという異色作品。彼女の人生については映画化もされているし、舞台作品にもなっているが、バレエというのはちょっと意外な発想。ところで、生前のデュプレの映像を見ると、彼女は大柄で存在感があるので、一緒にいるダニエル・バレンボイムが子供みたいに見える。

時系列で見るバランシン周辺

1961年 スザンヌ・ファレル、NYCB入団。
1968年 ゲルシー・カークランド、NYCB入団
1969年 ピーター・マーティンス、NYCBに移籍。スザンヌ・ファレル、NYCBを退団。
1974年 バリシニコフ、アメリカに亡命。ゲルシー・カークランド、ABTに移籍。
1975年 スザンヌ・ファレル、NYCBに復帰。
1978年 バリシニコフ、NYCBに移籍。
1980年 バリシニコフ、ABTに復帰。
1983年 バランシン、死去。

デンマーク・ロイヤル・バレエ

ピーター・マーティンスが、デンマーク・ロイヤル・バレエからニューヨーク・シティ・バレエ(NYCB)に移籍した後、アダム・リューダース、イブ・アンデルセンも同じようにNYCBに移籍した。三人の共通点は、背が高く、品のあるイケメンで、ブルノンビル・システムによるバレエの基礎がしっかりしていて、控え目なこと。そして、三人共、スザンヌ・ファレルのパートナーをつとめていること。しかし、三人の個性はそれぞれで、それぞれ素晴らしい。ただバランシンの好みだったというだけではないだろう。因みに、現在、デンマーク・ロイヤル・バレエの芸術監督とつとめているニコライ・ヒュッペも90年代にNYCBに在籍していた。

ウィンナーワルツ

YouTubeで、1983年に行われたバランシンの追悼公演を見る。「ウィンナーワルツ」全曲を見たのは初めて。ヨハン・シュトラウス、レハール、リヒャルト・シュトラウスの曲が使われている優雅な作品。フィナーレのリヒャルト・シュトラウスのワルツの場面が素晴らしく、そこだけ抜粋で上演されることもある。そこに出演するスザンヌ・ファレルが出色。バランシンがいかに彼女を愛していたかがよくわかる。そして、さらに素晴らしいのはパートナーのアダム・リューダース。まるで、影のようにサポートする。バランシンがめざしているのは、ファレルの素晴らしさで、パートナーに求められるのは、それを絶対に邪魔しない存在。リューダースはまさしくそういう存在なのだ。

ウィニペグ・バレエの「ムーランルージュ」

クラシカジャパンで、カナダ・ウィニペグ・バレエの「ムーランルージュ」を見る。タイトルの示す通り、ムーランルージュを舞台にしたロマンス。音楽は、オッフェンバック、ヨハン・シュトラウス、ラベル、ドビュッシー、マスネー、ショスタコービッチ、イベールなどの他、シャンソンやタンゴも入っていて多彩。三野洋祐がロートレック役を踊っている。他のダンサーに比べると背が低いので、ぴったりとも言えるが、健康的に踊るロートレックというのは初めちょっと違和感があった。しかし、踊りは内面の表現だと思って見れば納得できる。作品全体が、ロートレックの目線で作られており、ロートレックの描く絵のような印象。ただ、このロートレックは面倒見が良すぎ。