モースの周辺

モースのファーストネームがエンデヴァーという意味のあるかわった名前であるのと同じように、その周辺の役名もちょっと変わっている。サーズデイ、ストレンジ、トゥルーラブ、ファンシー。それぞれに、役柄と関係があるのだろうか。

サーズデイ

「刑事モース」で、サーズデイを演じているロジャー・アラムは、「警部モース」にもゲスト出演している。つまり、若い頃に晩年のモースと共演し、20年たって新人のモースと共演しているわけだ。しかし、この人、実はすごい人なのだ。ミュージカル「レ・ミゼラブル」のロンドン初演でジャベールを演じたのはこの人。その他にもシェイクスピアの舞台に多く出演している。まさしく名優。

六本木

俳優座5階稽古場で、劇団俳優座の「火の殉難」を見る。二・二六事件直前の髙橋是清周辺を描いている作品だが、古川健の手によるので、いろいろと仕かけがある。かつて、暗殺された人物との回想や、襲撃を待つ青年将校や、とっくに亡くなっている養祖母が時々登場したりする。一番の仕かけはネタバレになるので、ふせるが、ちょっと無理な設定かも。だんだん、仕掛けが見えてくるので、あまり衝撃的なラストとはなっていない。

マクミランの「うたかたの恋」

BSプレミアムシアターで、ロイヤルバレエの「うたかたの恋」を見る。クランコの同窓生、マクミランの作品。メロドラマとして描いている映画に反発して作った作品らしいので、映画の邦題をそのまま使うのはどうなのだろうか。原題通り「マイヤーリング」とした方がいいと思う。とにかく、激しく刺激的な作品。アシュトンの穏やかで無難な作品と、マクミランのこうした刺激的で主張の強い作品で、ロイヤルバレエはバランスをとっているように思える。

クランコの「オネーギン」

BSプレミアムシアターで、シュトゥットガルト・バレエの「オネーギン」を見る。東京バレエ団で見た事はあるが、本家の公演は初見。なんと、マリシア・ハイデが乳母役で出演している。驚いたのは、彼女が思いのほか小柄なこと。現在でも、本家はもとより、世界中のバレエ団がこの作品を上演し続けているくらい、この作品は素晴らしいのだが、彼女がいなかったら、この作品は生れなかっただろうし、ミューズの存在意義は大きい。

モースのファーストネーム

誰からも「モース」と呼ばれるモースのファーストネームは、エンデヴァーEndeavor。直訳すると、努力。モースの母親がクエーカー教徒で、普通は名前に使わない意味のある言葉を名付けたそうで、モースはそれがいやで、ファーストネームを名乗らないし、聞かれても答えようとしない。「刑事モース」の原題は、Endeavorなのだが、ただモースのファーストネームというだけではなく、努力という意味もこめているのだろう。おそらく、モースが匿名で寄付をした若手音楽家のためのEndeavor奨学金も、ルイス以外の人には、それが名前だとは思われていないのだろう。

下北沢

『劇』小劇場で、SPIRAL MOONの「物語のあるところ」を見る。4人の作家による6本(登場人物が2,3人)の短編朗読会ということで、ひと公演3本ずつの上演。舞台の前面に紗幕を張っているので、ちょっと見にくい。リーディングだからこそ、役者の表情をきちんと見たい。

清澄白河

深川江戸資料館小劇場で、座☆吉祥天女の「蛍」「大つごもり」を見る。久保田万太郎の二本立て。つい、昭和時代に見た舞台を思い返してしまう。清澄白河駅周辺のラーメン屋など店がいくつか閉店していた。帰りは赤札堂で買物。

六本木

俳優座劇場で、俳優座劇場プロデュースの「嘘」を見る。現代フランスの喜劇(といっていいのか)で、いかにも、ヨーロッパ的な雰囲気の作品。登場人物は二組の夫婦で四人だが、ほとんど二人芝居。六本木は普通ににぎやか。帰りはLincosで買物。

下北沢

東演パラータで、劇団東演の「霞晴れたら」を見る。病室を舞台にした作品。20年以上前だったか、同じ作者(ふたくちつよし)の男性版を見たが、それを基本に女性の病室にした作品。下北沢駅周辺はいつもと変わらずにぎやか。どこの店も人が入っている。しかし、なくなった店も多い。

ヌレエフ版「シンデレラ」

WOWOWで、パリ・オペラ・バレエの「シンデレラ」を見る。30年代のハリウッドを舞台にしたヌレエフ版。87年にニューヨークで見た以来なので、30年以上ぶり。しかし、このバージョンでずっと上演されていることが素晴らしい。この作品だけでなく、今でもレパートリーに存続しているヌレエフ版は多い。バリシニコフ版が、彼がABTを去ってからすっかり上演されなくなったのと対照的だ。

両国

シアターχで、ワンツーワークスの「忖度裁判」を見る。裁判員裁判についての作品。全員一致のアメリカの陪審員裁判と違い、多数決で決められるので、すべてがいい加減で軽く見える。

リードとモース

「クリミナルマインド」のドクター・スペンサー・リードとモースはよく似ている。天才的に頭がよく、直感力がある。必要以上に物知りなため、人が間違ったことを言うとすぐ訂正する。ついつい知識を述べ立ててしまうので、他人から見ると、嫌みで自分の頭の良さをひけらかしているように見え、そのせいで、友達が出来ないし、回りから孤立する。拳銃を持ったり、犯人を追いかけたりする姿が全く様にならない。近くに愛する人がいるのに、その愛を認めることが出来ない。モースの推理はリードが行っている行動分析や地理的プロファイリング、読解力に近いものがある。リードにとってのホッチが、モースにとってのサーズデイ。上司ではあるが、モースのことを面倒みなくてはいけない子供のように思っている。理解してくれる人が回りにいて、守ってくれていることも共通している。たぶん、リードは一生、結婚できないだろう。