モーツァルティアーナ

チャイコフスキーの組曲第四番「モーツァルティアーナ」。タイトル通り、モーツァルトの曲をベースに作曲されている。バランシンは、30年代からこの曲に振付ているが、亡くなる二年前の1981年、改めて振付をしている。小品を除くと、バランシン最後の作品と言える。バランシンは組曲第三番にも振付していて、それは全曲上演されるより、最後の「テーマとヴァリエーション」が独立して上演されることが多い。こちらは、かなり華やかな、いかにもロシアバレエといった作品だが、「モーツァルティアーナ」はそれとは全く異なる。出演者はソリスト3人、アンサンブルが4人、少女のアンサンブル4人と少なく、衣装はほとんど黒と白という地味な作品。原曲は、「ジーグ」「メヌエット」「祈り」「主題と変奏」の順になっているが、バランシンは、「祈り」「ジーグ」「メヌエット」「主題と変奏」の順にしている。オープニングの「祈り」はスザンヌ・ファレルと4人の少女によって踊られるが、明りが入って中央にいるスザンヌ・ファレルが顔をあげた時の美しさには息をのむ。ゆっくりしたテンポなので、複雑な振りはないが、その中で、バランシンが伝えようとするものが、しっかり体現できている。もう、こういうダンサーは出てこないだろう。ここを見るだけで、この作品はスザンヌ・ファレルのための作品なのだということがわかる。4人の少女たちは、ファレルの分身ということなのだろうか。「主題と変奏」は、ファレルとイブ・アンデルセンのパ・ド・ドゥ。アンデルセンはマーティンスやリューダースほど背が高くなく、ポイントで立つとファレルの方が高くなる。しかし、この作品で敢えて彼をパートナーにしたのは、パ・ド・ドゥだが、ソロの部分が多いためか、全体の印象として統一感を目指して(身長のある女性たちと、それと同じくらいの男性)いたのか? 全員が登場する、最後のヴァリエーションはこじんまりしているが素敵だ。バランシンの作品は、作品ごとに著作権を持っている人が違うということだが、この作品は誰が持っているのだろうか。あまり上演機会がないのが残念である。