VHSの整理 ムハメードフとタランダ

共に80年代初めにボリショイバレエに入団。グリゴロヴィッチの薫陶を受け、グリゴロヴィッチ・バレエの申し子となり、80年代後半にはボリショイの代表的ダンサーとなった。しかし、ムハメードフは主役、タランダは準主役(ほとんどが敵役)なので、共演機会が多い。「イワン雷帝」のイワン4世とクルプスキー、「愛の伝説」のフェルハードと大臣、「ライモンダ」のジャン・ド・ブリアンとアブダラーマン、「ジゼル」のアルブレヒトとヒラリオン、「黄金時代」のボリスとヤーシカ。どれも、女性をはさんでの三角関係なのだが、タランダは女性に振られる。ジゼルにもライモンダにも振られる。女王には足蹴にされ、アナスターシャには無視される。そこは、主役ではないので仕方ないところ。踊りの実力としては、二人共ほぼ同等だが、やはりムハメードフには華とカリスマがある。彼はコール・ドと同じ振りを踊ると、同じ振りであっても、彼は一人輝いて見える。タランダがコール・ドと同じ振りで踊ると、彼はコール・ドと見事なほど同化する。そこが二人の違いだ。この二人の共演で一番素晴らしいと思うのは「スパルタカス」だ。第一幕で奴隷同士が目隠しをして決闘をさせられる場面で、スパルタカスの相手になるのがタランダである。そのシーンだけで、スパルタカスに殺されてしまうので、役名もない。この場面、二人の奴隷が仮面をかぶせられて登場するので、見ている方もどちらがスパルタカスかわからない。衣装も同じだし、踊りもほぼ同じ。試合が終わって、初めて勝った方がスパルタカスだったとわかる。タランダの顔が見えるのは、死んで仮面を取られた時だけでほんの数秒。初めはこんな小さな役をなんでタランダがやるのかと思ったが、他の作品で共演する二人を見ていると、タランダだからこそできる役なのだとわかってきた。ムハメードフはソ連崩壊を待っていたようにロイヤル・バレエに移籍し、タランダはその後と追うようにボリショイを出て、独立の道を選んだようだ。